教区報「はばたく」に掲載のコラム
2012年バックナンバー

2012年12月号

 十月下旬、一週間ほど東北の被災地を訪ねる機会が与えられ、案内を受けながら様々な場所を実際に自分の目で見ることができました。
この訪問ではっきりと分かったことは、被災した状況やその後の経緯は、場所や人によって様々だということです。
これは少し想像すれば分かる当然のことですが、その当然のことを見過ごしている自分を発見しました。訪ねて行くことの大切さを改めて思い知らされています。

広域にわたる被災地を駆け足で巡る中、わずかではありますが実際に人に出会い話を聞く機会も与えられました。
その中で希望の言葉と共に、先の見えない現状への不安を聞きました。

これはキリストの言葉に違いない、と私はいま感じています。
(司祭 牛島幹夫)

2012年11月号

 私たち夫婦は毎年九月、結婚記念日に近い日に記念の祈りをすることにしています。
今年も八回目の記念日に、結婚式を司式された五十嵐主教に記念の祈りをしていただきました。
結婚の誓いの言葉を夫婦二人で再度言い直し、自分の言葉と連れ合いの言葉を聞き、心を新たにしました。
スタート地点を振り返り想い起こすことの大切さを改めて感じています。

クリスチャンの歩みにおいても「想い起こす」ということは非常に重要です。
聖書のみ言葉を通してキリストの歩みを想い起こし、また聖餐を通してキリストの死と復活を想い起こします。
私たちは、たった一度起こったキリストの復活を想い起こし続けることを通して、イエスのもたらした救いを二〇〇〇年間伝えてきました。
想い起こすことは過去に生きることではありません。想い起こすことを通して、今生きて働くイエスを発見するのです。
(司祭 牛島幹夫)

2012年10月号

 七月二十日、臨時教区会が開催され次期教区主教に横浜教区のルカ武藤謙一司祭が選出されました。
この日の福岡地方は激しい雷雨。選挙の最中にも雷鳴が響きわたりました。
雷の影響で数度にわたって停電になり、昼間にも関わらず文字も読みにくい程にあたりは暗くなりました。
議場にいた人はみな驚いたのですが、誰ともなく「聖霊が降ったようだ」という言葉を口にしました。
少なからぬ人がこの雷を通して教区会に神様が共にいてくださったことを感じていたと思います。

さて、私たちは次期主教を迎えるための準備を始めることになりました。具体的に何をする、お金はいくらかかるというようなことを考えます。
しかし、私たちがまずすべきことがあります。
それは、武藤司祭とご家族のために祈ることです。
迎える思いは一人ひとりそれぞれです。
そのすべての思いをあわせた九州教区中のあつい(熱い・厚い・篤い)祈りによって、新しい主教をお迎えしましょう 。
(司祭 牛島幹夫)

2012年9月号

 毎月第三木曜の夜、福岡聖パウロ教会の礼拝堂で黙想と祈りの集まりが持たれています。

ここでは、聖公会の聖歌集にも載せられているテゼ共同体で作られた短い聖歌を繰り返し
歌いながら黙想を深めています。
私もギターの伴奏でこの会に毎月参加しています。

この会の特徴は聖書の朗読を聞いた後に少し長めの黙想の時間をもっていることです。

十分弱ほどの沈黙をろうそくの明かりの中で過ごします。静かな時間を過ごすことが少ない現在、 とても貴重な時間となっていると思います。

黙想の時、そこにいる人を静寂が包んでいるように見えます。
しかし、そこにあるのは静寂だけ ではありません。
心のうちにはいろいろな思いが巡ります。
普段の生活では見過ごしそうな 心のざわめきにも気づかされます。
騒々しい日々の中であえて静寂を選び心の声に耳を傾けるとき、 私たちは語りかける神様の声に気づくのかもしれません。
(司祭 牛島幹夫)

2012年7、8月合併号

 五月三十一日大韓聖公会ソウル教区の主教座聖堂で聖職按手式が行われました。
この日、新たに九人の聖公会司祭が生まれ、九州教区に新たに迎えた李(い)相(さん)寅(いん)師も司祭に按手されました。
百人を超えるソウル教区の司祭達と共に九州教区の教役者がそろって按手式に参加したことは印象深い出来事でした。
按手式の二日後、ソウル教区の司祭から一つのニュース記事を知らされました。

「聖公会の司祭達カンジョン村で初めてのミサ」と書かれたその記事には、三十一日に按手された司祭のうちの四人が翌日に韓国海軍の基地建設に反対する済(ちぇ)州(じゅ)島(ど)カンジョン村へ赴き、その場所を自分たちの最初の聖餐式司式の場所とした、ということが書かれていました。

この記事にあった新司祭の言葉です。
「司祭として初めて持つミサを最も苦痛を受ける所、不正が蔓延したところで執行するのに意味があると考えた。」
この司祭の姿に、今のソウル教区の力の源泉を感じました。
(司祭 牛島幹夫)

2012年6月号

 対馬から直方へ引っ越すことになった時の事です。
見積もりに来てくれた引越業者の方がわたしたち夫婦に言いました。
「ここにある荷物を全部運んだら、次の住まいには絶対に荷物が収まりません。だから、荷物の整理をしてください。」

言いにくいであろう、この言葉を言ってもらったおかげでその次の日からわたしたち夫婦の荷物減量作戦が始まりました。

取りかかりは順調で次々にゴミが出ていくのは爽快でもあったのですが、次第に行き詰まったのを思い出します。
そして、最終的には自分がその時点で何を大事にしているのかということを考える時となりました。 このとき、いろいろな物を人に譲りました。
今でも、時折その譲ったものを大事に使ってもらっているところに出会うことがあります。
もしかしたら手放したものは本来行くべきところに行ったのかもしれないと最近は感じています。
(司祭 牛島幹夫)

2012年5月号

 今、直方キリスト教会では月に二回聖書を読む会を開き、聖書の言葉を分かち合う一時をもっています。
聖書を通して様々なことを共有するのはとても楽しく、私にとっては日々の生活の原動力になっています。

この会では、会の最後に参加した人全員が祈る時をもっています。
聖書の言葉で感じたこと、日頃の思いなど、それぞれの人がその時々に大切にしていることを祈ります。
その中で、自分が言葉にできなかった事を祈ってもらえる時があり、また思いもしなかったことに目を開かれることもあります。
共に祈ってくれる仲間があることはほんとうに素晴らしいことです。 正直に言いますと、私は祈りがとても大切なことだと信じているのに、一人で祈ることがなかなか出来ません。
ですから、共に祈る仲間がいることが私にとってはどうしても必要なのです。
祈りの仲間によって支えられていることを主に感謝します。
(司祭 牛島幹夫)

2012年4月号

 私の前任地である離島対馬の厳原は転勤族の多い地域です。

大学などの進学先が島内に無いこともあり、毎年三月の最後の週は、転勤や進学・就職などで島を離れる人の見送りで空港や港が大混雑します。

私も何度も見送りに行きました。特に港での見送りは切なく、ゆっくりと離れていく船と岸壁の間で何度も「さようなら」の声が交わされ、それに船の汽笛の音が合わさると、なんとも寂しい思いになったものです。

三月の末、港町厳原には毎日別れの汽笛の音が鳴り響きます。
しかし、三月が過ぎ四月になると今度は沢山の出会いが待っています。

転勤や進学で島を離れた人にも新たな地で新たな出会いがあり、対馬にも沢山の人が新たにやってきます。

私も移動してきた一人でした。新たな出会いには、期待と共に不安があります。

教会が、新たなスタートを切る人の不安を受け止める場になって欲しいと願います。
(司祭 牛島幹夫)

2012年2月号

 十二月二十一日ペテロ宮本憲二郎司祭が神様のもとへ召されていった。
宮本司祭のことでまず思い出すのは、私の司祭按手式の日の朝、私が宿泊していた教区センター三階の部屋に出向いて、祈らせて欲しいと言ってその場で祈ってくださったことだ。

また、病気で休職されてからは時々電話をいただいていたが、その電話の中で、今自分のために祈ってくれと頼まれ、電話を通して宮本司祭のために祈ることがあったのを思い出す。

宮本司祭は、ほんとうに祈りを大切にする人だったように思う。
翻って自分を思う時に、他の人との祈りによる交わりを宮本司祭のようには持っていないことに気づかされる。

また、信仰生活の中でどれだけ祈りによる交わりをしてきただろうかと反省させられる。
「ここであなたのために祈らせて欲しい。」
「今、私のために祈ってください。」
そう言い合える関係を一つ一つ作っていきたい。 (司祭 牛島幹夫)

2012年1月号

 直方の地に赴任して一年。
四月に任命された直方セントポール幼稚園チャプレンの仕事も一年生。一つ一つの出来事が新鮮であり、子どもたちを通してさまざまなことを教えられ気付かされる毎日である。

さて、昨年十一月、幼稚園の年長組の子どもたちと、幼稚園のそばにある総合病院を訪問した。
子どもたちからは入院している方たちへ歌のプレゼント。
歌の後に小さな花束を子どもたちの手から歌を聞きに来てくれた入院している方に直接お渡しした。
また各学年でつくった製作物もプレゼントした。
幼稚園では毎年この病院を訪問しているのだが、看護師の方からは、子どもたちの製作した絵を見るとほんとに元気がでると言っていただいた。

子どもたちが宝だということを、あらためて実感する時であった。

▽一月からこのコーナーを担当する。子どもに囲まれる日々、荒野の声にならないかもしれないがお付き合いいただきたい。 (司祭 牛島幹夫)



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